社会保険労務士稲門会

早稲田大学OB・OGの社労士が集うホームページ

● 第12回・講演と懇親の夕べ(濱口桂一郎・労働政策研究・研修機構統括研員「日本の雇用終了-労働局あっせん事例の分析」)
2012年12月1日(土)ホテル銀座ラフィナート

2012年12月1日(土)午後3時より「ホテル銀座ラフィナート」にて、「第12回講演と懇親の夕べ」が開催されました。この度は独立行政法人「労働政策研究・研修機構」の統括研究員である濱口桂一郎先生を講師として招聘することができ、「労働局あっせん事例の分析」というわれわれ社会保険労務士にとっても身近な講演テーマでもあったことから、初参加の会員も含め72名の会員の皆様にご出席いただき、盛況のうちの開催となりました。
村上芳明会長の開会の挨拶(上写真)

第1部・講演の部
  第1部・講演の部は、山浦英一厚生委員長(東京会)の司会のもと、村上芳明会長(東京会)の開会の挨拶に続いて、濱口桂一郎先生に「日本の雇用終了―労働局あっせん事例の分析」というテーマで1時間20分にわたりご講演いただきました。

 今回のご講演は、濱口先生の近著『日本の雇用終了―労働局あっせん事例から(JILPT第2期プロジェクト研究シリーズ④)』(労働政策研究・研修機構 2012年3月刊行)において取りまとめられた近年(2008年度)の労働局の個別労働紛争のあっせん事例(同年の総合労働相談件数は約107万件、内あっせんに至ったものは8,475件。本書ではさらにその中から1,144件のあっせん事案を抽出し、個々に紹介・分析)の全体傾向を分析するとともに、主だった事例を選び出して解説し、今まであまり触れられることのなかった今日の職場で発生している紛争の実態を、実証的な見地のもとに読み解くことで、日本の雇用社会の実態を浮き彫りにするようなお話の内容でした。

 紹介されたあっせん事案の多くは、解雇、雇止め、退職勧奨、自己都合退職などの「雇用終了」事案でしたが、裁判に至らないこうしたあっせんの段階では、職場の暗黙のルールとしての「職場における法」が判例規範とは別に存在しているということを指摘され、その最たるものとして先生が挙げられたのが、「態度」が悪ければ雇用終了となるというルールであり、「能力」不足による解雇とされた事案であっても、もともと「能力」の捉え方の主観・客観の判断の区別が曖昧であることも相俟って、実は「態度」が悪いから解雇に至ったということが根柢にあった思われる事案が多くあるとのことです。

 先生のお話をお聴きして興味深かったのは、判例法理上は「態度」や「能力」だけを解雇理由とするのは難しいというのが一般通念であるのに対し、行政によるあっせんの場では、そうしたことが企業側の主張にとどまらず、ひとつのア・プリオリな解雇規範になっていると考えられるということ、多くの中小企業が経営不振という理由だけで極めて簡単に解雇を行っていて、真に経営上の理由であるかどうか疑わしいケースも中には含まれていると考えられるという、このあたりに、中小企業の実態と労働法や判例法理との乖離がみられるとの指摘でした。

 しかしながら実際のあっせんの場では、その正否(解雇の正当性の検証)よりも労働者側と会社側の合意とりつけに重きが置かれていること、日本は整理解雇に対する判例法理上の規制が強いという一般通念とは別の次元で、解決金という名の下に、金銭補償による雇用契約の終了が、少なくともあっせん事例を見る限りでも、裁判例の何十倍もの規模で行われていることが、先生のお話から如実に窺えたように思います。
 限られた時間の中でのご講演でしたが、労働局によるあっせんの実態をわかりやすく且つ丁寧に検証された今回の濱口先生のお話は、われわれ社会保険労務士にとって、顧問先におけるそうした紛争等の問題に人事・労務のプロとして積極的に関与していく糸口となるものと思われ、たいへん有意義な内容であったように思います。
 林智子副会長(東京会)の閉会の辞をもって第1部を終了いたしました。

                           
第2部・懇親の部



 第2部・懇親の部は、同じく「ホテル銀座ラフィナート」において、佐野正治幹事(東京会)の司会のもと、村上芳明会長(東京会)の開会の挨拶、藤原久嗣相談役(東京会)の乾杯の音頭で歓談に移りました。 【村上芳明会長の挨拶(左)/藤原久嗣相談役の挨拶(右)】 
濱口桂一郎先生のご挨拶
 会員の皆さんの会話が会場のあちらこちらで弾むなごやかな雰囲気の中、濱口桂一郎先生からも改めてご挨拶を賜るとともに、会の中盤ではビンゴゲーム大会が行われて会は一気に盛り上がりの度合いを高め、新入会員・初参加会員の方々から自己紹介のご挨拶をいただいて新たな親睦の輪も広がりました。
 さらに、各委員会の活動報告や母校・早稲田大学での提携講座の実施状況報告(来年度から「支援講座」に)、連合会の現況報告、2月9日(土)に行われることが決まった第4回会員親睦日帰りツアー「浅草ちんや&寄席ツアー」のご案内等もありました。
新入会員の皆さんも自己紹介
 こうして楽しい時は流れ、感興醒めやらないうちに会は終了予定刻となりました。最後に、蒲生秀晴副幹事長(東京会)の指揮により全員で校歌を斉唱し、渡邉和洋副会長(東京会)の閉会の挨拶をもって会は盛況裡に終了し、中締めといたしました。
 中締めの後もしばらくの間は同会場での懇談は続き、最後は蒲生副幹事長の指揮により母校第一応援歌「紺碧の空」を全員で唱和して、会は無事お開きとなりました。